不動産投資を軌道にのせるには、幅広い分野の知識があると有利です。例えば、立地や建築に関する法律、空室や節税の対策、経営計画のプランニングなど。
これらの知識を体系的かつ効率的に学ぶ方法として、不動産に関する資格取得を選択する方もいます。ここでは代表的な3つの資格を比較し、どの資格が不動産投資に役立つかについて考えていきます。
不動産実務検定(大家検定)は不動産投資に役立つか?
不動産実務検定は、日本で初めての不動産投資をテーマにした資格であり、これまでに約4000人が講座を受講しています(2017年11月現在)。この検定は通称「大家検定」と呼ばれるだけあり、不動産投資にダイレクトに結びつく内容です。
不動産実務検定にチャレンジしているのは、賃貸物件の経営や土地活用などをしている大家さんが中心です。不動産投資会社のコンサルタントも受講者の一部を占めています。
不動産実務検定ってどんな資格なの?
不動産実務検定にはランクがあり、2級、1級、マスターの3段階になっています。大家に必要な知識を得るなら2級または1級の取得で十分でしょう。その上のランクのマスターは、セミナー講師を目指したい方向けの位置づけです。
ランク別の主な内容としては、2級では、賃貸管理の基本的な知識や技能を習得します。具体的には、入居者トラブルや空室が発生した時の対処法などです。1級では、不動産投資、税務、土地活用などの知識や技能を習得します。具体的には、ファイナンスの計画立案、競売や借地取引に関する知識などです。
これらの知識があることで、不動産投資会社や管理会社とのコミュニケーションがスムーズとなり、トラブル発生時も的確な対策がとりやすくなります。
不動産実務検定の難易度は?
1級の合格率は54%、2級の合格率は81%となっています(2017年11月現在)。今回、比較対象として取り上げる宅建士やマンション管理士と比べると高い合格率になっています。
合格までの流れとしては、12時間の講座を受けた後、試験に合格すれば認定となります。ご自身が求めるスキルに合わせて、1級・2級どちらから受講しても構いません。両方に合格した方は、「JREC認定不動産コンサルタント」の称号が使えるマスターの試験にチャレンジできます。
不動産実務検定にかかる費用は?
2級、1級、マスターを取得するのにかかる費用は次の通りです。この費用には受講料・テキスト代・消費税が含まれています。
- 2級 39,720円
- 1級 94,800円
- マスター 216,840円
マンション管理士は不動産投資に役立つのか?
マンション管理士は、管理組合の運営や修繕計画をサポートする専門家です。先ほど紹介した不動産実務検定と並んで、不動産投資との親和性が高い資格と言えます。
不動産実務検定との大きな違いは、国家資格という点です。一般財団法人が主体になっている不動産実務検定と比べると、社会的な信用という意味ではこちらが勝ります。
マンション管理士ってどんな資格?
マンション管理士が一番活躍するのは、住人同士のマンション修繕の話し合いの場です。意見が一致しないケースも多く、放置すると住人同士の長期的な対立に発展する恐れもあります。マンション管理士は法的根拠を示しながら、妥協点を探る役割を果たします。
不動産投資家の方がこの資格を持っていれば、自身の区分マンションの修繕決議でアドバイスできます。また、一棟物件を所有している方は、適切なタイミングでの修繕や建て替えの判断ができます。
マンション管理士の難易度は?
年に1回、11月下旬に試験が実施されます。四択のマークシート方式で50問が出題されます。この部分だけを見ると問題数が少ないため、簡単そうな印象ですが実際には難易度はかなり高いです。
直近の合格率は7〜9%。難関と言われる税理士の合格率15〜17%のだいたい半分くらいですから、その難易度の高さがわかります。毎年1万5〜7千人が受験し、合格するのはわずか1500人前後という狭き門です。
マンション管理士取得にかかる費用は?
マンション管理士を取得するための受験手数料は9,400円です。難易度が高い資格のため通信講座を利用する方も多いです。例えば、ある大手通信教育のマンション管理士コースは67,000円になっています。
宅建士は不動産投資に役立つのか?
最後に、不動産分野の資格としては一番人気があり、知名度も高い宅建士を見ていきます。宅建士とは、宅地建物の取引を安全かつ円滑に行うための専門家です。
宅建士の資格を持っていることで、不動産会社への就職が有利になったり、待遇がよくなったりするために人気があります。不動産業界以外でも、金融機関や資産運用会社のコンサルタントも受験しています。
ただし、宅建士が不動産投資の役に立つのか?という視点で考えると、ないよりあった方が良い程度です。あくまでも不動産取引のための資格であり、不動産投資には予備知識として役立つくらいです。
宅建士って具体的にどんな資格?
宅建士は、一般的に不動産の専門家というイメージがあると思います。厳密には、宅地建物の分譲・仲介時に、依頼者に対して重要事項の説明をしたり、契約書の記名・押印をしたりする専門家です。これらの業務は、宅建士のみが行える業務と規定されています。
宅建士は宅地建物という財産を扱う専門家ということで、実に多くの知識が求められます。例えば、次の分野の知識を習得する必要があります。
- 権利関係に関すること(民法総則、担保物件、相続など)
- 法令上の制限に関すること(都市計画法、建築基準法など)
- 宅建業法に関すること
- その他、鑑定、取引実務、税金
このように宅建士には、不動産だけでなく、民法や相続の知識も求められます。取得することで、ビジネスパーソンとしてレベルアップできる知識を獲得できます。
宅建士の難易度は?
試験は、年に1回10月下旬に開催され、四択のマークシート方式で50問が出題されます。合格率で見てみると、直近では15〜18%あたりで推移しています。具体的な人数でいうと、18〜20万人が毎年受験していますが、約3万人前後しか合格していません。
不動産業界で働く方や金融機関など、ある程度の不動産の専門知識を持っている人たちがチャレンジしてこの合格率ですからハードルは高いです。合格までに要する期間は、最低でも3〜6ヶ月と言われます。時間にすると300〜400時間くらいが平均です。
さらに試験に合格した後、宅建士登録(2年以上の実務経験または登録講習の修了)、法定講習を経てようやく宅建士として業務を行うことができます。
宅建士取得にかかる費用は?
受験手数料は7000円です。難易度が高い資格のため、リアル講座や通信講座を利用する方も多いです。例えば、ある大手通信教育の宅建士取得コースは63000円に設定されています。
まとめ
ここで解説した内容をまとめると、不動産投資に役立つか?という視点だけで考えると、「宅建士<マンション管理士<不動産実務検定」になります。
とはいえ、不動産投資に役立てるという意味では、必ずしも合格にこだわる必要はなく、それぞれの資格の中から必要なエッセンスだけを抜き出して学ぶという方法もあります。
これらの資格を学ぶことは、レベルの差はあっても不動産投資のプラスになるので、時間的に余裕がある方や、これから本格的に不動産投資をしていきたいという方は資格取得も視野に入れましょう。