不動産投資でサブリース契約は解約できるのか?

不動産投資でサブリース契約は解約できるのか?

サブリース契約には、多くのトラブルが報告されています。その多くは、家賃保証についての説明不足が原因です。

サブリース契約は、新築なら30年といった長期契約になりますが、家賃保証が十分でないと分かっても、基本的にオーナーからの解約はできません。

サブリース契約のしくみと、失敗に陥らないための対策について解説します。

【目次】不動産投資でのサブリース契約の解約
  1. サブリース契約の中途解約について
    1. サブリースの悪質なケース
    2. サブリースのしくみ
    3. 基本的に中途解約ができない
    4. 解約できるようにするには…
  2. サブリース契約をする際の注意点
    1. サブリースのメリット
    2. サブリースのデメリット
  3. サブリースとの違いについて
    1. サブリースと一括借上げの違い
    2. サブリースと空室保証の違い
    3. サブリースと滞納保証の違い
  4. 業者ごとに異なるサブリースの契約内容

サブリース契約の中途解約について

サブリースにはトラブルの報告例が多く、不安に感じるという人もいるかもしれませんね。サブリースを巡るトラブルのほとんどは、家賃収入が減額されるリスクについて説明を受けていなかった、というものでしょう。

サブリースの悪質なケース

外部委託を使った賃貸経営は、他にも事業をもつ投資家なら日常的に利用しています。それなのに、サブリースの印象が悪くなってしまったのは、悪質な商法が蔓延したためです。

不動産運用の知識がない土地オーナーに意図的に賃貸物件の建設をもちかけ、建設費で稼いだ上に、家賃保証を建前にサブリース契約をとりつけて長年しばり続ける、というのが典型的な悪質なケースのサブリースです。

ひどい場合は、サブリース契約自体の説明をすることなく、建設請負の契約時にサブリース契約に署名させられたという人もいます。契約更新時には不当な家賃減額に加えて、補修工事の費用を上乗せ請求してくるなど悪質です。

サブリースのしくみ

通常の賃貸経営では、オーナーが貸主、入居者が借主となって賃貸借契約を結び、入居者からオーナーに賃料が支払われます。これに対し、サブリースとは一般に「転貸」のことを意味し、サブリース会社(不動産会社)がオーナーと入居者の間に入って物件を転貸することをいいます。

オーナーはサブリース会社に物件の管理から賃料の回収までを任せる契約を結び、その会社を通じて賃料を得ます。オーナーが得るのは入居者が払う家賃の7~9割程度となりますが、その代わり空室があってもサブリース会社が賃料を保証する家賃保証がウリになっています。

入居者が賃料を払うか否かに関わらず、オーナーは常に、契約した割合の家賃収入を得られるというわけです。

サブリースの契約期間は築年数に応じたものになりますが、最長30年や35年という長い期間です。この間ずっと家賃保証が付くというのは、確かに魅力的に感じます。ただ問題は、定期的な契約更新があり、賃料の改定がなされることをオーナー側が理解していないケースが多々あることです。

賃料が下がってくると、今度はこの長期契約を容易には解約できないことが問題となってきます。

基本的に中途解約ができない

サブリース契約は、契約事項に中途解約の取り決めがない限り、基本的にオーナー側からの中途解約はできません。一方、サブリース会社側は、都合が悪くなればいつでも解約できます。

オーナーから解約できたとしても、猶予期間が6か月などの長期であったり、高額の違約金を支払う条件がついていたりする可能性があります。

また、契約が満期になっても、サブリース会社が契約更新を望めば、オーナーは特別な理由(正当事由)がない限り、更新を回避するのは難しいとされています。

通常の不動産取引では、不動産会社には事業者としての責任があります。たとえば、契約前に書面と口頭で取引にまつわるリスクを顧客に説明しなければなりません。ところが、サブリースの場合、形式上、「サブリース会社がオーナーから物件を借りる借家人」という体裁になります。

土地家屋の賃貸借について取り決めている借地借家法は、「借家人保護」の立場に立っています。入居者が一方的に借家から追い出されたりすることを防ぐための法規定です。

これを逆手に取れば、サブリース会社は「保護の対象」となり、契約を解除することも居座ることもできるのに対し、オーナーからはなかなか解約できないことになります。

解約できるようにするには…

一度契約が成立してしまえば、解約するのは容易なことではありません。

サブリース会社と誠実に話し合って、合意解約できればよいのですが、だとしても時間と労力はかかるでしょう。立退き料を提示して、サブリース会社側に解約を受け入れてもらうという方法も考えられます。

契約前であれば、契約書に「サブリース会社側から契約期間中の中途解約はできない」といった、希望の条項を盛り込むように交渉することもできます。

また、強制的な契約更新を回避するためには、契約自体を「定期建物賃貸借契約」にすることが考えられます。これは契約更新しないことを前提とした賃貸借契約です。

サブリース契約をする際の注意点

サブリース契約は、事前にメリット・デメリットの双方をよく検討し、もし実行するなら、契約内容をしっかり確認することが大切です。

サブリースのメリット

契約がフェアなものであれば、サブリースには多くのメリットがあります。

管理・運営を一任できる

サブリースというのは、不動産会社がオーナーから物件を一括借上げするものですから、オーナーの利益には空室や滞納は影響しません。オーナーは、面倒な物件の管理をプロに任せて、運営の手間やリスクを回避することができます。

トラブルの当事者にならない

家賃や退去を巡って入居者とトラブルが起こり、場合によっては訴訟を起こしたり起こされたりという問題に発展することがあります。サブリース契約では、入居者にとっての大家はサブリース会社となり、オーナーが訴訟の当事者になることはありません。入居者とトラブルがあっても、家賃保証でオーナーの収入は確保されます。

シンプルな収支管理

サブリース契約では、管理を任せる分だけ減額するとはいえ、ほぼ家賃収入だけのシンプルな収支管理となり、確定申告も簡単です。月ごとに変動しないで安定した家賃収入が入るので、ローンの返済も安定的に行えます。

サブリースのデメリット

いろいろなデメリットがありますが、メリットと比較検討しましょう。

家賃収入が減額する

サブリース契約をすれば、100%の家賃収入は得られなくなります。オーナーに入ってくるのは入居者が支払う賃料の7~9割程度。なかには6割という場合もあります。9割だったとしても、契約更新ごとに賃料が値下げされていくことがあり得ます。

さらに、契約には家賃保証の免責期間が設けられている場合があります。新築物件の建設初期や入退去の期間には家賃保証が免除されるという条項です。こういった付帯条件が不利なものとなっていないか、しっかり確認しましょう。

また、敷金・礼金・更新料なども多くの場合、受け取れません。一方で、修繕費はオーナー負担という契約になっていて不当に高い工事費を請求されるケースもあります。

入居者を選べない

入居者の審査はサブリース会社の基準で行われます。家賃保証があるだけに、サブリース会社としては、なんとしても空室をつくりたくないと考えているはずです。近隣に迷惑をかけるような入居者を放置するかもしれません。

もしサブリースを解約したら、オーナー自身がその入居者との関係を引き継ぐことを心しておきましょう。入居者情報を開示するという条件をつけて契約するといった対策が考えられます。

サブリース会社の経営不振

サブリース会社が経営不振に陥ったり、最悪の場合は倒産も起こり得ます。

元は信頼のおける不動産会社だったとしても、経営が難しくなってくれば、サブリースでは借家人が有利だという立場を利用するようになるかもしれません。また、倒産前後の家賃や入居者に返還すべき敷金を十分に回収できないケースが考えられます。

サブリースとの違いについて

サブリースと紛らわしい用語について説明します。

サブリースと一括借上げの違い

サブリースというのは、転貸や又貸しのことです。よくサブリースと「一括借上げ」は同じと言われますが、一括借上げというのは、オーナーと不動産会社の契約関係を指す言葉です。

本来は、不動産会社がオーナーから一括借上げすることをマスターリース、借り上げた物件を入居者に転貸することをサブリースと呼びます。

しかし、一括借上げと転貸・家賃保証を含む不動産業者の事業を、全体として「サブリース(契約)」と呼ぶことが一般化しています。

サブリースと空室保証の違い

サブリース契約は、賃貸経営を他者に任せて家賃収入だけを得るものです。

一方で、オーナーが自分で賃貸経営を行う場合に、一部を業務委託できるサービスもあります。一般的なのは管理業務の委託で、管理委託料を支払って、入居者の管理や賃料回収などの業務を委託するものです。この場合は、オーナーと入居者の間で賃貸借契約が結ばれます。

空室保証は、そういった業務委託サービスの1つです。サブリースの家賃保証と混同されやすいですが、一括借上げではなく個別のサービスとして検討することができます。

空室保証では、空室が長引いたときや、一定の家賃収入を下回ったときに、収入の補助を受けることができます。保証会社に保証料として毎月の掛金を支払うことで、一定の家賃が保証される、保険のようなサービスです。

オーナーと入居者との直接契約なので、敷金・礼金・更新料はオーナーが受領します。

サブリースと滞納保証の違い

滞納保証では、保証料を支払うことで、家賃の滞納時に、保証会社から家賃を支払ってもらいます。サブリースとは異なる個別のサービスです。

家賃滞納のリスクを保証するサービスですが、最大の特徴は、入居者が契約者となることでしょう。入居希望者に保証人がいないときに、入居者負担で滞納保証契約を結んでもらい、保証人の代わりとすることが多いためです。

業者ごとに異なるサブリースの契約内容

サブリースを行う会社は、だいたい3つのタイプに分けられます。1つは、建設会社が土地活用の提案から建築に引き続いてサブリースまで請け負うものです。次に、大手管理会社が管理業務と並行してサブリースも行う場合。最後に、地元の不動産会社が保証会社や管理会社の代理店としてサブリースを斡旋するものです。

管理手数料

サブリースの家賃保証は7~9割ですから、逆にいえば、残りがサブリース会社の得る管理手数料となります。実際には、10~15%というのが一般的でしょう。サブリース契約ではなく、一般の管理業務の委託では、管理会社の手数料は3~5%程度です。

契約期間

契約期間は長いもので30年や35年となりますが、2年ごとの契約更新などの規定を含み、更新時には賃料引下げの可能性があります。業者によっては、当初10年は賃料更新なしで家賃保証をするといったところもあります。

契約内容は各サブリース会社によって、それぞれ異なります。サブリース契約をする場合、契約は長期間となりやすいもの。少しでも有利な条件で物件を任せられるよう、契約前に各社をしっかり比較検討しましょう。