アパートやマンションを経営するうえで最も重要なことは、所有物件ごとの収益性をいかにあげるかです。
たとえ現在の収益が、年間を通して(税金などのコストを払った後でも)黒字であっても、それで良しとするのではなく、経営者である以上、どん欲に利益の追求を行うべきです。
物件の収益性を高める方法はいくつかありますが、ここでは即効性の高い“家賃”について解説します。
アパートやマンション経営の家賃の値上げ
家賃について深く考えず、据え置きにしてしまうオーナーさんが多いのですが、もしかすると、本来得られるはずだった売り上げを、知らないうちに捨てているかもしれません。
家賃の値上げに対する知識やポイントを抑えておきましょう。
家賃は上げられるのか?
結論から言うと、貸している最中でも家賃を上げられる可能性はあります。ただし、家賃と言うのはあくまでも“地域内での相対評価で決まる“ということは覚えておいてください。
簡単に言うと、所有物件の家賃が、他の物件の相場に比べて低い場合に家賃を上げることができます。
家賃に関係する要素
家賃というのは、主に次の4つの要素によって決まってきます。
立地
都会エリアなら、最寄駅やバス停から物件までの距離が最重要です。また、周辺にコンビニやスーパー、歯科などの施設の有無、女性向け物件なら街灯の有無も大事です。
周辺物件と比較し、駅までの距離が短ければそれが付加価値となり、家賃を上げる理由付けとなります。逆に、周辺物件よりも辺鄙な地域にあり、物件の周囲にお店も少ない物件であれば、逆にマイナスポイントになってしまいます。
間取り
例えば、以下の2つの間取りが合った場合、どちらに住みたいでしょうか?
- 1K 30平米 ユニットバス
- 1K 30平米 風呂トイレ別
多くの人は「2」を選択すると思います。ということは、「1」よりも「2」の方が需要が高く、家賃を上げられる可能性が高くなります。
ほかにも、部屋の広さや、部屋数などによっても付加価値が変わってきます。
設備
当然ながら、部屋内の設備も家賃に関係します。エアコン、お風呂の追い炊き機能、コンロの有無、テレビインターホンなど、付加価値を高められる設備があるほど、家賃を上げられる可能性は高くなります。
築年数
築年数が浅いほど家賃を高くできます。一般的には築浅物件の方がキレイですし、心理的にも多くの人が使用した部屋より、あまり使われていない部屋の方が気持ちが良いということが理由です。
家賃の決め方
これらの要素を勘案し、家賃を決めていくわけですが、その際の具体的な方法をお伝えします。まずは、ポータルサイトをいくつか使って、自分の物件が存在するエリアの物件をいくつかチェックします。
チェックする項目は、先ほど述べた、立地、間取り、設備、築年数と家賃です。これらを調べて、数値や特徴をエクセルなどで表にまとめます。いくつかの物件をチェックすると、その地域の平均的な物件の条件や、おおよその家賃相場が見えてきます。
例えば、あなたの所有物件が以下の通りだとします。
- 築5年
- 駅から徒歩10分
- 1K22平米
- エアコン有、バストイレ別
- 家賃5万円
これに対して、競合になりそうな物件の平均的な条件が以下の通りだとします。
※今回の例では所有物件が1Kで単身者向けなので、チェックする物件も単身者向けに絞ってチェックしたと仮定します。
- 築10年
- 駅から徒歩10分
- 1K 22平米
- エアコン有、バストイレ別
- 家賃5万円
この場合、所有物件の築年数が平均より浅い以外は同条件ですので、家賃を築年数分上げることができるだろう、と考えます。どのくらい上げられるかは、年数を軸に家賃相場を確認してあたりを付けます。
逆に、エアコンが無かったり、ユニットバスだったりなど、物件の平均値よりも条件が悪い部分がある場合は、その分を-2000円、-3000円などと評価し、トータル的に考えて、家賃を下げた方が良いと判断することもあります。
マイナス評価が多く家賃を下げるべきとなった場合、どうしても家賃を下げたくない時には、マイナス要素を工事で改修するという方法もあります。
この場合は、上げられる見込みの家賃分の金額と、工事費の金額を考えて、利回りが良いと判断できる場合にのみ実施してください。利回りが悪く投資価値が無さそうな場合は素直に家賃を下げたほうが良いでしょう。
値上げするメリットとデメリット
次に家賃を上げる場合のメリットとデメリットについて解説します。
メリット
家賃を上げる場合のメリットは言うまでもなく収益のアップ(増収)です。
8室アパートの場合、1室2000円上げるだけで、月1.6万円の増収が見込めますので、年間だと19.2万円の収益が見込めます。管理手数料5%としても、約18万円の収入が増えます。
もし所有物件の家賃が相場通りか調べたことが無い方は、是非やってみてください。2000円くらいであれば上がるかもしれませんし、それで年間18万円も収入が増えるならやらない手はないでしょう。
デメリット
家賃を上げた場合のデメリットは、家賃の釣りあげるによる退去と、空室ができたときに埋めにくくなるということが考えられます。賃貸経営では空室管理が重要なため、心配になる方も多いです。
しかし、このデメリットはあまり考えてなくても大丈夫だと考えています。というのも、前述した方法で所有物件の家賃を適正価格に上げて、そのあとにすぐ退去しても、すぐに空室が埋まる可能性が高いと考えられるからです。
なぜなら、今の物件探しはポータルサイトで条件付き検索を行い、大量の物件データを見比べ、気に入った物件にアプローチするという方法が主流だからです。
この方法では、様々な物件を比較するため、検索者は自然と家賃や物件の相場観が養われます。もしあなたの物件が適性な家賃で市場にあるならば、検索者が興味を持たない理由はありません。自然に興味を持つ人が現れ、物件を見学し、入居を決めてくれるはずです。
この時に注意すべきポイントは、周囲の物件と比べて、あなたの所有物件の家賃が割高になってしまっている場合です。
よくある事例が、中古の物件を買ったけど修繕などで思いのほか出費がかさみ、利益が出にくい。おまけに、中古だから家賃も周辺物件と比べて、少し安めに見えてしまったため、家賃を上げて収益性を改善しようと、安易に考えて家賃を上げてしまった場合です。
この考え方は、適正な家賃を設定するというよりも、「オーナー都合の家賃上昇」です。これでは入居者も決まりません。
前述した通り、家賃は周辺物件との相対評価で決まります。周辺の物件の家賃が5万円で、あなたの物件が4万円だとしても、何の根拠もなく1万円上げようということはやってはいけません。
家賃を上げようと考えるならば、周辺物件より優れている点、劣っている点を洗い出し、所有物件の適正家賃を算出することが先決です。
その結果、周辺物件より家賃を低くすべきとなった場合は、そもそも物件選定や融資の引き方がまずかった可能性があります。このような場合は、早々に売却し損切りするのも1つの手でしょう。
家賃を値上げする際の注意点
家賃を値上げする場合は、全室一斉に実施することはお勧めしません。できれば、空室が出たタイミングで、入居者が決まる前にその部屋だけ家賃を上げましょう。
というのも、入居者がいる部屋の家賃を上げてしまうと、たとえ適正価格であっても退去する人が一定数出てきてしまいます。
さきほど、「それでも問題ない」とお伝えしましたが、退去する部屋が多くなってしまった場合、一時的に収益性が大きく低下してしまい、1か月や2カ月程度は赤字になる可能性が出てしまいます。
このリスクを減らすためには、1室ずつ、退去が出た順に家賃変更していく方法がおすすめです。
値上げを拒否された場合の対処方法
基本的には退去後に家賃を上げる方法をおすすめしますが、物件オーナーの都合によっては、入居者がいる状態でも仕方なく家賃を上げたい場合もあると思います。
しかし、これは中々難しい問題があります。
まず、入居者側には、家賃が上がることに対して素直に従う義務がありません。入居を決める際の契約書に書いてあると思いますが、入居者は契約書に記載されている家賃以上の金額を払う必要はありません。
従って、家賃上昇を通告しても、無視して今まで通りの家賃を払い続けるといった人もいます。
これの対処法としては、家賃価格を変更し再契約することです。それに応じてくれれば何も問題はありませんが、応じなければ退去ということになります。
このように、入居者がいる状態で家賃を上げようとするとトラブルが起きるリスクもあるので、なるべく退去後のタイミングで家賃を上げることをおすすめします。
まとめ
アパートやマンションの家賃は、なんとなくの感覚で決めるわけではなく、競合物件を調査し、その相場に応じた家賃を設定することが重要です。
その結果、家賃を下げざるを得ないと判断できる場合、リフォームによってマイナスポイントを改修する方法もあります。利回りを計算して、納得のいく数字の場合にのみ実施しましょう。リフォームしても家賃の改善が難しい場合は、売却も選択肢に入れるべきです。
家賃を上げるタイミングは、トラブルや退去リスクを減らすため、できるだけ空室が出た部屋から家賃を上げましょう。