競売物件への投資は儲かるのか?購入とローンの組み方

競売物件への投資は儲かるのか?購入とローンの組み方

不動産競売では、市場価格より2~5割程度安く物件を購入できます。ローンが組みやすくなったことで、入札に参加する一般の人も増えました。

ただし、不動産業者が介在しないために、物件の占有者との立退き交渉が必要になったり、補修費や残置物の処理費が必要になったりと、特有のリスクもあります。

競売物件購入のための手順や費用、入札のヒントなどをご紹介します。

競売物件での購入の流れとローンの組み方
  1. 競売物件への不動産投資
    1. 競売物件とは
    2. 入札は誰でも参加できるの?
  2. 落札する際にかかる費用
  3. 競売物件を購入する際の流れ
  4. 競売物件を購入する際の注意点
    1. 競売と公売は違うので注意
    2. 注意が必要な物件の特徴
    3. 入札価格を決める際の注意点
    4. 購入する際にローンは組めるのか?

競売物件への不動産投資

競売物件は、個別の条件によって物件の価格が評価されるため、一般の取引価格より2~5割安く購入できる可能性があります。

競売物件とは

まず競売物件とは何かというと、「所有者が支払いの義務を果たせなくなり差し押さえられた不動産」であり、それを裁判所が売却するのが不動産競売です。

裁判所は、競売にかけて得た利益を、債権者の借金返済に充当します。マンション、一戸建て、土地、店舗など、通常の不動産取引で扱われるあらゆる不動産が対象となります。

また、農地や市街化調整区域内の建物といった、通常の取引ではあまり流通していない物件も競売の対象です。このように競売では、一般には流通しづらい物件が手に入ることもあります。

入札は誰でも参加できるの?

不動産競売に参加するためには、特に資格などの制限はありません。基本的に誰でも参加することができます。ただし、過去に競売で入札したのに代金を払わなかった人や、債務がある人などは参加することができません。

また、本人に依頼された業者が参加することもできます。入札から落札までの業務、物件の調査、落札後の業務などの代行が業者に依頼されます。入札業務代行を行う業者は、インターネットでも探すことができます。

落札する際にかかる費用

競売物件を取得するためには、物件の購入費以外に、どのような費用がかかるのでしょうか。さまざまなリスクを考慮し、その他の費用がかかることを含めて入札を検討しましょう。

物件の購入費

物件の購入価格は、競売では落札時の価格になります。入札時に、物件の「買受申出保証金」を支払う必要があり、落札後に物件の「残代金」を支払います。ローンも可能ですが、条件が難しいこともあり、現金での支払いが通例となっています。

不動産取得税・登録免許税

通常の不動産取引で物件を入手したときと同様に、不動産取得税や登録免許税といった税金がかかります。土地・建物の購入または建物の建築などによって不動産を取得したときにかかるのが不動産取得税です。また、落札後、物件の所有者を名義変更するために登録免許税が必要となります。

リフォーム費など整備費

競売には、さまざまな状態の物件が出品されます。中には、人が住むためにはリフォームやクリーニングが必要な物件、取り壊しを要する建物が付随する土地などを購入した場合には整備費がかかります。競売では、整備費を考慮したうえで入札価格を設定する必要があるでしょう。

立ち退き費用など交渉費

競売の場合にかかる特殊な費用として、物件の占有者との交渉費用がかかることがあります。占有者に立ち退いてもらうための立ち退き費用や、立ち退きの際に残していった残置物の処理費用、管理費等の滞納金の支払いなどです。交渉がうまくいかなかった場合には、裁判所に立ち退きの強制執行を行ってもらいます。その費用も買主負担となる場合があります。

競売物件を購入する際の流れ

競売物件を購入する際の流れについてみていきましょう。

物件の競売は、債権者が競売を申し立てることによって始まります。裁判所は、不動産の占有状況などの現況調査報告書と評価書をもとに売却基準額を決めます。

物件の公示・情報閲覧

競売物件の情報は、裁判所で見ることができます。裁判所の閲覧室に、公示した競売物件の情報が備え置かれています。物件情報として公開されるのは、物件明細書、現況調査報告書、評価書です。資料は閲覧室でコピーします。閲覧できる期間は2~3週間です。

  • 物件明細書…権利関係、売却条件など
  • 現況調査報告書…物件の現在の状況や、所有者の情報など
  • 評価書…不動産の評価額、周囲の環境、公法上の規制など

物件概要は、インターネット上で見て、ダウンロードすることもできます。

参考サイト

入札から開札まで・売却許可の決定

入札したい物件があったら、入札期間中に入札の手続きを行います。期間は1週間です。

期限内に保証金を振り込み、入札書と入札保証金振込証明書、その他の添付書類を提出します。裁判所で執行官に提出するか、執行官宛てに郵便で送付します。

保証金は、売却基準額の2割程度で、落札後は購入代金に充当されます。落札できなかった場合には、保証金は返還されます。

開札期日になると、裁判所で入札人の立ち会いのもとで開札されます。最高価格をつけた買受申出人が落札者となります。

開札後、裁判所は落札者の調査をします。欠格事由がないかどうか、売却手続きに誤りがないか、などです。問題がなければ1週間後に売却許可が決定されます。

代金納付と物件の引渡し

裁判所から落札者に残代金納付の通知が送られます。確定日から1か月以内に納付します。期限に間に合わないと、売却許可が失効となり、保証金の返還もできなくなります。

通常は、裁判所の書記官によって抵当権の抹消などが行われ、所有権が移転登記されます。

通常は代金納付から1か月程度で引渡しが完了します。物件の占有者との交渉がうまくいかず、強制退去の申し立てが必要になった場合などは、もっと時間がかかります。

競売物件を購入する際の注意点

競売物件を購入する場合のリスクとして、いろいろなケースが考えられます。権利関係や法的な規制などは事前に確認できますので、宅地建物取引主任者や弁護士などの専門家に相談しておくことも検討しましょう。

競売と公売は違うので注意

競売には売主が存在していません。裁判所を介して所有権が移転します。このため、通常の不動産取引で売主の義務となっている事項がクリアされていない可能性があります。

たとえば、売主がいれば、占有者の立ち退き、鍵の引渡し、設備の点検修理、残置物の撤去などは、売主に責任があります。競売では、それらが整備されていない物件を購入してしまうリスクがあるのです。

注意が必要な物件の特徴

不動産投資に慣れていない初心者であれば、競売で物件を取得する際には、占有者がいない賃貸住宅をお勧めします。占有者がいる場合や一戸建てなどは、通常の取引に比べてリスクがあります。

立退き交渉が必要なケース

競売不動産は、住宅ローンの滞納が原因で競売となることが多いものです。滞納しているのが物件の占有者であれば、家賃の支払い能力もなく、退去に必要な費用すら捻出できないかもしれません。裁判所に強制退去の申し立てをしても、なかなか引渡しが実現できないケースもあります。現実には、引越し代金や滞納分などを立退き料に替えて占有者に退去してもらい、強制執行よりも安い費用で済ませることが多いようです。

ゴミ屋敷

競売物件では、通常の取引と違い、購入前に現物を見ることができません。外観や周辺環境を見に行くことはできますが、内観を確認することはできないのです。間取りなどから掘り出し物と思っても、購入後にゴミ屋敷だったことが発覚…とまではいかなくても、債務者が夜逃げ同然で家を出ていたり、ただ怠慢で所有者が残置物を放置していたり、ということも考えられます。

一戸建て住宅

一戸建ての場合は、一般の売買では瑕疵は基本的には売主が負うことになりますが、競売では売主不在のため、結果的に買主が瑕疵を負うことになります。そうなると、補修費や改修費が購入費に見合わないケースも出てきます。

入札価格を決める際の注意点

入札は、一度提出すると撤回や変更ができなくなるため、入札額は慎重に決めなければなりません。賃貸目的の購入であれば、想定家賃を定めて、利回りと回収年数を算出してみましょう。

まず、築年数や物件の状況、周辺環境などを考慮し、近隣の相場を調べて、想定家賃を検討します。

年間家賃÷購入額が利回り、購入額÷年間収益(家賃-経費)が回収年数です。

通常の売買では、中古物件の場合、表面利回り10%、回収年数10年を基準に考えればよいでしょう。競売には特有のリスクがあることを考え合わせ、表面利回り15%以上、回収年数10年以内を入札の目安としたいところです。

購入する際にローンは組めるのか?

競売物件の売買では、伝統的に現金での支払いが通例となっていましたが、現在では、よりローンが組みやすくなっています。

1998(平成10)年に民事執行法が改正され、その82条2項の規定により、所有権移転登記と金融機関による担保設定登記を同時に行うことができるようになりました。これにより、金融機関が競売物件に対して融資するリスクが軽減されたのです。

ローンが組みやすくなったことで、業者ではなく一般の人も、不動産競売の入札に参加するようになってきています。

今でも競売物件への融資の前例がない金融機関では難しいかもしれません。しかし、不動産競売の代行業者で、すでに金融機関との取引実績があるところに依頼すれば、ローンを組める可能性は上がるでしょう。

ただし、そもそも賃貸目的の投資用不動産のローンは最長10年とされ、金利も住宅ローンより高く設定されます。ローンが組めても、それほど有利な条件とは言えません。その上で、書類の不備等でローンの実行が代金の納付期日に間に合わなければ、落札は取り消され、保証金も返還されないリスクを負うことも考え合わせるべきでしょう。

競売物件は確かに割安で購入できますが、競売ゆえの特有のリスクもあります。ローンでの購入もできますが、そう簡単ではないということも考慮しましょう。