ワンルームマンション経営は小回りがきくため、初心者にとって比較的ハードルの低い投資先です。いきなりマンション一棟や戸建て住宅に投資すれば、失敗する可能性はワンルームに比べて大きいといえます
また、ワンルームマンションでも、新築と中古で生じるメリットやリスクに違いがあります。そこで今回は、ワンルームマンション投資のメリットや、考えられるリスクと失敗例について解説します。
なぜワンルームマンション投資か
ワンルームマンション経営は、20代で独身の人たちでもすぐに始めることができ、年齢を生かして早く完済すれば、その後はずっとローン返済なしで収益が得られます。都心への人口集中や晩婚化が進んでいる背景にも後押しされ、改めて注目を集めている資産運用です。
一棟購入によって考えられるリスク
投資物件には、1棟建てのアパート・マンション、戸建て、ファミリーマンション、ワンルームマンションなどさまざまなタイプがあります。
1棟マンション・アパートに投資した場合、物件内のすべての部屋で築年数や物件エリアは同じですね。みな同じ条件なわけですから、もし当たれば大成功ですが、そこで災害でも起こったらどうなるでしょう……? 木造アパートであれば、1部屋から出火して、あっという間に全室が消失してしまうかもしれません。
それに、近くに条件のいい高層マンションができたり、近所で事件や事故が起きたりしたら、その悪影響は全室に及んでしまいます。
また、あらゆる室内設備が同時に設置されていますので、交換時期も同じタイミングで立て続けに必要となるでしょう。エアコンや給湯器といった設備は、一斉に交換するとなると多額の費用がかかります。
ワンルームはリスク分散できる
それらのリスクを避けるためには、「築年数の異なるワンルームを複数購入する」ことです。
この場合、一度にすべての資金を投入するのではなく、幾つかの時期に分けて投資することになります。それだけの工夫で、築年数、エリア、購入時期を分散し、さまざまなリスクに備えることができます。
空室についても、1つの建物にある部屋をすべて埋めようとするのは大変です。もともと土地を所有している場合は、その土地に建っている建物全体のことを考える必要があるのに比べて、ワンルームマンションの新規購入なら、特に好条件の物件を1部屋ずつピンポイントで購入することができます。
ワンルームマンションであれば、都心の立地のいい物件でも1千万円程度から購入できるでしょう。
なお、ファミリータイプのマンションでは、物件価格が高くなりますし、面積に対して同じだけ家賃を高く設定できるというわけでもありません。1家族に対し、専有面積が2倍になっても賃料は2倍以下となってしまいます。
小回りがきくワンルーム
賃貸経営は、空室率の増減に大きく左右されます。空室の期間が長くなれば、賃料を下げて入居者を確保しなければなりません。その物件に人気がなければ、これが悪循環となって賃料がどんどん下がってしまいます。
土地・建物の購入価格(と売却価格との差額)が、所有期間全体を通しての家賃収入や経費よりも高ければ、その投資は結果として赤字となってしまいます。
現在の賃貸経営は、バブル期のように購入後、高騰するのを待って売却し、利益を得るといったものではなく、空室になるのを回避しながら、長期間保有して定期的な家賃収入を着実に得ていくものです。しかし、想定外の事情によって、やむをえず短期間で売却しなければならなくなることもあるかもしれません。
ワンルームマンションは1部屋の価格がそれほど高くありませんから、そのような切り替えがしやすいという点においても、初心者が比較的低いリスクで始められる投資だといえます。
新築ワンルームマンション投資について
新築のワンルームマンションというのは、まだ誰も入居していない物件のことをいいます。新車と同じで、誰か別の人がいったん所有したものは、もう新築物件とは呼べません。
集客力がある一方で、価格が高いところがネックになります。
メリット
まだ誰も入居していないわけですから、新築ワンルームマンションのメリットといえば、その物件が新しくてキレイなため、格段に入居者を見つけやすいという点です。新築ですからクリーニングの手間と費用をかける必要もなく、希望者がいればすぐに入居してもらうことができます。
また、新築の建物は、最近の耐震性の基準を備えている点もメリットでしょう。中古物件の場合には、建物の劣化には十分に注意する必要があります。
部屋のレイアウト、設備等も当然ながら最新です。古い中古物件では、高齢者や障害者は住むことが難しくなりますが、最近の建物はあらかじめバリアフリーに対応しています。
リスクや失敗例
新築の最大の問題点は価格にあります。新築物件においては、毎月のキャッシュフロー(収益や返済といった物件をめぐるお金の出入り)がマイナスにならないという条件をクリアした計画を立てたいところです。
広告費用の上乗せ
新築物件の価格には、多額の広告費用が上乗せされていることが少なくありません。新築物件の売主は、豪華なチラシや販売員の増員にかかる広告宣伝費、それに売主の利益分を価格に上乗せして販売します。
新築から中古になると、それだけで物件価格は2〜3割程度下がります。なぜなら、こうした大々的な宣伝が行われるのは、新築だけだからです。それでも購入するだけの魅力ある物件かどうか見極める必要があります。同じような条件で築年数の浅い中古物件があれば、得られる家賃収入はほとんど変わらないでしょう。
高利回りの謳い文句
そうした広告の中には、高い利回りを喧伝しているものが少なくありません。注意したいのは、表面利回りだけを表示しているものです。表面利回りの計算は、年間家賃÷購入価格×100として算出します。
しかし、実際の経営時には、家賃に対する諸経費や、購入にかかった仲介手数料、登記費用、ローン費用、保険料、不動産取得税といった各種料金を加えた実質利回りを考えなければなりません。
この2つの利回りには数パーセントの差があることも少なくありません。高い利回りをうたっている宣伝にはくれぐれも注意しましょう。
中古ワンルームマンション投資について
賃貸で家賃を度外視して「どうしても新築がいい」という人は少ないでしょう。新築かどうかは、入居率にそこまで影響しません。むしろ価値観が多様化し、古い物件をリノベーションして住むのを好む人も出てきました。
特に築年数の浅い中古ワンルームマンションは条件がよく、料金も抑えられていて手頃です。
メリット
中古マンションの大きな魅力は、それまでの家賃と入居率の推移を知ることができるという点でしょう。
重要事項調査報告書をチェックできる
マンションの管理状況を示した資料は、マンションの建物管理会社がまとめている「管理に係る重要事項調査報告書」に記載されています。この資料で、これまでの管理状況や、マンション管理組合の財政状況などが確認できます。
借入残高がないか、管理費・修繕積立金など管理組合の財政もチェックしましょう。
旧オーナーの修繕積立金を引き継げる
一般的に、マンションは10〜15年ごとに、大規模修繕として外壁の補修や屋上の防水工事、鉄部の塗装などが行われます。修繕積立金は、マンション全戸のオーナー全員が毎月積み立てて、そうした将来の大規模な修繕工事に備えるものです。積み立てられたお金はマンションの管理組合が所有しています。
1部屋のオーナー(マンションの区分所有者)が変わっても、積立金はマンションを売却した旧オーナーに返却されません。そのまま引き継がれ、旧オーナーのお金も修繕工事に利用されます。つまり、新オーナーは、少ない費用負担で物件の修繕をしてもらえるというわけです。
これがもしマンション1棟だった場合、オーナーは1人しかいませんから、将来の修繕に備えて大きな資金をすべて自分で準備しなくてはなりません。
10年以内の築浅物件がオススメ
中古といっても、さまざまな築年数の物件があります。たとえば、築10年以内のものであれば、「住宅瑕疵(かし)担保履行法」の対象となります。
簡単に言えば、新築から10年以内の住宅は、その構造部分と防水部分に何らかの欠陥が見つかった場合、工務店や不動産業者が無料で修繕しなければならないという決まりです。さらに、事業者が倒産などで対応できない場合についても保証されており、購入したオーナーや入居者は費用を負担しなくてよいことになっています。
また、2000年以降に建築された比較的築年数の浅いワンルームマンションは、バスとトイレが分かれており、広めの室内と充実した設備がそろっていることが多いです。それから、築15年以内の物件であれば、ローンの条件が緩和されており、低い頭金で購入価格全額に近いローンを組むことができます。
リスクや失敗例
中古でも条件が良ければ、ある程度高い家賃を設定することができます。そのために大事なことは、管理状態をしっかり把握しておくことです。建物の劣化がひどく、建物の構造に問題があったりすれば、修繕費やリフォーム費が大幅にかかり、収益どころではなくなってしまいます。築10年を過ぎると建物全体が傷み始めますので、築浅物件といえども油断は禁物です。
マンションは築年数に応じて地震に対する強度が異なります。投資すべきなのは、1981(昭和56)年以降に建築された物件。それまでの旧耐震基準に対し、同年施行の改正建築基準法に定められた新耐震基準に準じているからです。
築年数が古く、耐久性に疑問があるような物件を選んで、万が一、入居者に何かあった場合、オーナーの責任が問われることもあります。ローンで購入したマンションに多額の修繕費と賠償金が必要になり、窮地に陥るといったことがないように注意が必要です。
いくらリスク分散型といっても、失敗することもありますし注意すべきポイントがいくつかあります。この記事の内容を参考に、堅実な賃貸経営をしていきましょう。