不動産投資において、物件選びは経営のカギを握る最重要ポイントです。なかには賃貸経営を行うにあたって、絶対に買うべきでないアパートやマンションというのも存在します。
たとえば、「反社会的勢力に関わりがある」「違法物件」「地域の要となる施設・大学等の移転や取り壊し」といったものです。
また、絶対とは言わないけれど、これは避けるべきという条件もあります。そこで今回は、不動産投資で買ってはいけないアパートやマンションの特徴について解説します。
買ってはいけない収益物件の特徴
不動産投資を行う際に、最も重要といえるのが物件選びです。
同じ物件でも、その時点での財政状況や、投資家としての経験値といったものによって、選んでもよいかどうかが左右されます。悪条件に見えても、ちょっとした知恵や工夫で解消できる場合があるからです。
しかし、なかには購入してしまったら最後どんなに手を尽くしても、いかんともしがたい最悪の条件というものもあります。事例をもとに、絶対に“買ってはいけない”物件を紹介しましょう。
Sさんの例
【元暴力団事務所近くにアパート購入、入居者はいないも同然】
Sさんは、初めての賃貸経営で都心のアパート一棟を購入した。急行列車が止まる駅から徒歩1分という立地にも関わらず、2階建て6部屋のアパートで入居者が2名という現状から、値段は格安だった。
旧オーナーが集客の手間を惜しんで口コミだけで経営しているという情報をつかんだSさんは、インターネットの物件サイトに載せれば入居者は必ず集まると確信し、この格安物件を手に入れたのだ。ただし、売主が契約を急いでいたため、物件の下見はおざなりになってしまった。
Sさんは入居者がすぐに見つかると期待していたが、内見の希望はあっても、どうしても契約には結びつかない。
物件の近所を見て回っていた時のこと。Sさんは、アパートの向かいのブロックに不審な事務所を発見した。近所の人に聞いてみると、そこはもともと暴力団の事務所だという。よく見ると、事務所の横のカベには「暴力団は出て行け!」などと書かれている。
Sさんは愕然とした。いくら待っても入居者は増えず、最近になって、現在のアパート入居者2名というのも、どうやらその事務所の関係者らしいことがわかってきた——。
反社会的勢力の事務所と関わりがある
Sさんの失敗の原因は明白ですね。購入する物件の下見はじっくり行うのが鉄則です。物件周辺のチェックも怠ってはなりません。
また、ローンで物件を購入する場合には、ローンを組む段階で反社会的勢力の事務所があると分かると審査が通らない可能性が高くなります。これは事務所が物件の中ではなく近所にある場合についても該当することがあるようです。
建物が線路の近くに建っている
Sさんのアパートは徒歩1分。同じ1分圏内でも、線路のすぐ近くに建っている物件でした。
電車の音は、人によってはそれほど気にしないこともありますし、慣れる場合もあります。問題は、振動です。これは人に不快感を与えるものですし、何より建物がすぐに傷んでしまいます。土台がしっかりしていれば、建物にある程度の問題があってもどうにか対処できますが、振動があると建物はダメージを受けやすいのです。
木造住宅の寿命は30〜50年程度ですが、古民家として味わい深いものになっていくこともあります。適切な点検・補修を行い、よい状態を保っていけば、資産としてずっと保持していくことができるものなのです。
Kさんの例
【ショッピングモールが移転し、需要が急降下したマンション】
4年前に定年退職したKさんは、退職金を使って不動産投資をしようと決心した。毎月の家賃収入が入れば、年金と合わせて老後は安泰と考えたのだ。
まとまった金額の資金があるKさんは、部屋数が多く将来的に大きな家賃収入が望めるということで、マンション一棟を購入した。このマンションから徒歩10分圏内に中型のショッピングモールと私立大学の校舎があり、高い需要のある物件だったのである。
ところが1年後、そのショッピングモールは閉鎖され、車で15分のところに大型モールとしてリニューアルオープンする計画が発表された。しかし、Kさんのマンションの駐車スペースは全戸の4分の1ほどしかない。
また、Kさんは私立大学に通う学生もターゲットの1つになるかと思っていたが、調べてみると学生はまったく入居しておらず、その需要をすくい上げるためには賃料を大幅に下げなければならないことがわかった——。
工場や大学が移転を予定している
大学や工場、大型スーパーなど、その地域に大きな影響を与えている施設が移転や取り壊しになると、集客に影響を及ぼしやすいでしょう。鉄道駅やバス停などの交通機関も含め、そのような計画がないか自分自身で丁寧に調べておくことが大切です。
ただし、移転が計画段階だった場合には、現オーナーが、今後売れなくなるのではと懸念し、物件価格が非常に安く設定されるかもしれません。その場合、家賃を下げて他の客層を呼び込むことに成功する可能性もあります。不安材料がある物件でも、このように利回りのいい物件については一考の価値ありです。
街並みに大きな変化があれば周辺の需要は大きく変わる可能性があります。この変化は場合によってはチャンスにもなりうるため、しっかり吟味する必要があるでしょう。
駐車場が不足している
駐車場が必要な分だけない物件では、その他の条件がよくても、入居者にまったく選ばれないことがあります。
Kさんのマンションでは、ショッピングモールが徒歩圏内にある間は駐車場が不足していても問題ありませんでした。ところが、ひとたびショッピングモールが車を必要とする距離に移転してしまうと、周辺の駐車場付き競合物件に水をあけられてしまいました。
その地域で駐車場が必須かどうか、不動産会社に尋ねるなどして必ず確認しましょう。地域によっては、ファミリー物件には2台分の駐車場が必要な場合もあります。
建築基準法に違反している
あらゆる建築物は、建築基準法に従わなければなりません。この建築基準法に違反している物件や、登記されていない建物が含まれている物件などは、違法物件です。
よくあるのが、新築時に設計図を途中で変更してしまったり、後になって建増ししたりして、容積率オーバーになってしまっているケース。建築基準法は、土地面積の広さに応じて延べ面積の上限を設定しています。これが容積率です。
たとえば、200m2の土地に対して200%という容積率が設定されている場合、延べ面積400m2までの建物しか建設できません。この基準は用途地域ごとに定められています。
ただし、建物を建てた後に異なる容積率が設定された場合などに発生する「既存不適格」の物件は、例外として違法とはなりません。
違法物件は、ローンを組む際に審査で発覚したりして融資されないということが起こります。また、何らかの方法で入手したとしても、後で自分が売りたいと思った時に買い手がつきません。不動産投資では、出口戦略を考えることも重要です。
どうしても避けるべき条件というのは、それほど多くはありません。「買ってはいけない」物件は、ここで挙げたものぐらいです。多くの場合は、条件が悪く思えても、利回りなど様々な観点から検討してみてください。勝算ありと判断できるもののなかには、チャレンジする価値のあるものもあるはずです。