ワンルームマンション投資は、短期的に一攫千金を狙うタイプの投資ではありません。物件を長期的に保有し、運用中の管理を怠らず、しっかりとした出口戦略(売却)を行って大きな利益を生み出せる仕組みです。
そのスタートアップとして行うのが、購入前の収支シミュレーションです。これによって購入しようとしている物件で本当に儲けられるのかが明確になります。この収支シミュレーションに欠かせない要素である費用や利回りについて解説します。
始める前に知っておきたいこと
初期費用、運用時のランニングコスト、利回りの順に解説していきます。
初期費用はいくらかかるのか?
まず物件そのものの価格ですが、たとえば東京23区内の中古ワンルームマンションの相場は、1500万円から2500万円あたりが相場だと言われます 。もちろん、築年数が新しいほど、あるいは、好立地なほど物件価格は高くなります。
最近は、サラリーマン投資家や海外投資家がくまなく物件をウォッチしているため、東京23区内の中古ワンルームマンションの物件価格もやや高い傾向があります。
逆に、東京23区内のワンルームマンションでも、築古物件なら1000万円前後、あるいは、数百万円から購入することも可能です。ただし、こういった物件を購入する場合は、近い将来、リフォームや設備交換が発生することを見込んで収支シミュレーションを考える必要があります。
もちろん金融機関でローンを組むなら、物件購入価格をキャッシュで用意する必要はありませんが、フルローンでない場合は頭金も必要です。
設備交換が発生した場合のコストは、部屋の広さや機能にもよりますが、たとえばエアコン交換で7〜10万円程度、給湯器交換で15〜25万円程度が一般的です(工事費込み)。
初期費用としては物件購入価格以外に「登記移転費用」や「火災保険料」もあります。また、ローンを利用して物件を購入する場合、金融機関に支払う「ローン手数料」もかかります。
登記移転費用は、 行政書士に支払うものなので極端な差はありませんが、火災保険料は同じような補償内容でも保険会社ごとにかなり違います。相見積もりをとって比較し、納得できる保険料と保証内容のものを選びましょう。
ランニングコストはいくらかかるのか?
運用中のランニングコストとしては、入居者トラブル対応や集金代行などを行う管理会社へ支払う「管理料」があります。管理料は賃料の3〜5%程度が相場です。ちなみに、ご自身で入居者管理をするのであれば管理料は丸々カットできます。その分、トラブルが発生した場合は手間がかかります。
もう一つのランニングコストは管理組合に月々支払う「修繕積立金」です。管理料と修繕積立金を合算すると、たとえば、都心の2000万代の好立地物件で10万円台から20万円台前半あたりが平均的です。
運用中には、ランニングコストだけでなく、突発的なコストもかかります。その代表は、空室が発生した際の「募集広告料」や「設備の変更や修繕費」などです。部屋の広さや設備のランクにもよりますが、エアコンで7〜10万円、給湯器で15〜25万円がかかります(工事費込み)。
加えて、築15年以上の築古物件は、どこかのタイミングで大がかりなリフォームを実施することも想定しなければなりません。リフォーム代の概算を把握しておき、収支シミュレーションに組み込んでおくとリアルな経営に近づきます。
利回りはどれくらいなのか?
利回りには「表面利回り(グロス利回り)」と「実質利回り(ネット利回り)」の2種類があります。表面利回りは、年間賃料を物件購入価格で割ったものです。簡易に利益が算出できる一方、諸経費が組み込まれていないため、あくまでも大雑把な年間利益になります。実質利回りは、表面利回りにすべての諸費用(ここまで解説してきた初期費用、固定の経費、突発的な経費)を加えて、現実に近い年間利益を出したものです。公式はそれぞれ次のようになります。
- 表面利回りの公式 年間賃料÷物件購入価格(×100)
- 実質利回りの公式 「(年間賃料−運用の諸経費)÷(物件購入価格−購入時の諸経費)(×100)」
では、実際にどれくらいの利回りが得られるのでしょうか? 東京23区内の中古ワンルームマンションだと、4〜5%くらいの表面利回りがあれば経営するメリットがあると判断するのが一般的な考え方です。
地方都市の中古マンションだと、物件価格が安い分、高利回りの物件もありますが、空室リスクが高いという難点があります。セオリーで考えれば都心のワンルームマンションの購入が安全です。
4〜5%の表面利回りの場合、インカムゲインで見ると月々の家賃収入はわずかですが、売却時のキャピタルゲインで見ると残債が減った分、購入価格と売却価格の差額がそれほどないのであれば、まとまった最終利益が期待できます。
税金についてもしっかり抑えよう
収支シミュレーションには税金も組み込む必要があります。種類がたくさんあるので、漏れのないようにしましょう。
購入時と運用時にかかる税金は?
ワンルームマンション経営にかかる経費には、物件購入時や運用中に納める税金もあります。これらの税金を含めて実質利回りを計算します。税金を含めないで利回りを計算すると、実際の利益とのズレが大きくなります。マンション経営をはじめる前に、どのような税金があるのか必ず覚えておきましょう。
購入時にかかる税金としては、登録免許税(土地評価額×1.5%+建物評価額×2%)、不動産取得税(土地評価額×1.5%+建物評価額×4%)があります。他にも、売買契約書と金銭消費貸借契約書に貼る印紙代などがあります。
運用中に毎年支払う税金には、以下のものがあります。
- 固定資産税…土地や家屋を所有している人が市町村に納めるものです。
- 都市計画税…市街化区域内に土地や家屋を所有している人が納めるものです。
- 所得税、住民税…個人で経営している場合、黒字になった分に対してかかります。
- 法人税…法人で経営している場合、黒字になった分に対してかかります。
損益通算とは?
マンション経営で黒字になった時は、所得税、住民税、法人税などがかかります。逆にもし赤字になれば、他の所得と合算して税金を計算できます。マンション経営が節税になると言われるのは、この損益通算という仕組みがあるからです。
たとえば、年収900万円の給与所得の方がマンション経営で100万円赤字を出せば、「900万円(給与所得)−100万円(赤字分)」となります。所得が減った分の所得税は青色申告時に還付されます。
まとめ:マンション投資は煩雑なのに人気があるの?
マンション経営にかかる費用や税金は、種類が多く覚えるだけでも大変です。他の投資と比べて経費の計算や支払いが煩雑ですが、それでも多くの方がマンション経営をしているのは“投資メリットが大きい”からです。
マンション経営のメリットは、次のようなものが挙げられます。
- (都心の好立地物件なら)安定した家賃収入が得られる。
- 毎年の税金の支払いがあるものの、拘束時間がなく手間がかからない。
- 流動性が高いので売りたい時に処分しやすい。
- ある程度の築年数が経っている中古物件なら家賃も売却額も下がりにくい。
- 実物資産なので残債が減れば他融資の担保にできる。
このようなマンション経営の特性を理解して、ご自身と相性の良い投資方法かをしっかり見極めてください。